特定技能外国人の転職が容易でない3つの理由

技能実習生の修了者をそのまま特定技能に移行する事例が少ない理由に、企業側が「転職」を警戒していることが挙げられます。

「特定技能は転職が認められているので、給料の高い都会へ逃げてしまう。やっぱり技能実習のほうがいい。」…という話をよく聞きます。

本当に、特定技能外国人は簡単に転職してしまうのでしょうか?
私はそうは思いません。特定技能外国人が、容易に転職しない3つの理由があるからです。

理由①:N3レベルの日本語では、正しい転職情報をあつめることは難しい

技能実習を終了した外国人を、そのまま特定技能で継続雇用した場合~技能実習生の日本語レベルはどのくらいでしょうか? 
日本で3年~5年生活した技能実習生でも「N3合格者」の人はあまりいません。仮に「N3合格者」だったとしても、日常会話はカタコトでしか話せません。

技能実習生の「失踪」ならブローカーの手引きで可能化もしれません。しかし特定技能外国人の「転職」にはそれなりの情報収集が必要です。しかし外国語による転職サービスは、まだ無いのが現状です。N3レベルの日本語能力で、正しく転職場を集めるのはかなり難しいと思われます。

理由②:転職リスクを考えると、慣れ親しんだ会社がいい

転職にはリスクがあります。新しい人間関係、職場環境に適応できるだろうか?…私たち日本人が日本国内で転職する場合でも不安があります。まして外国人が日本で転職するのは、当人にとってもの大きなプレッシャーです。よほど給与が高くなるとの保証がなければ転職を決断するのは難しい筈です。

徳島と東京で最低賃金の格差はあります。しかし転職を決意ほどの格差かどうかは、人によって感じ方が異なります。また転職を決意する理由は給与だけでないというのは、日本人も外国人も同じです。

技能実習生がそのまま特定技能で同じ会社で働く場合は、雇用する企業にも、働く外国人にも、リスク(転職リスク、採用リスク)が少ないというメリットがあります。

理由③:円満に転職には、離職する会社の協力が不可欠である

特定技能外国人のパスポートに「指定書」という紙が貼られており、働く会社の名前が書かれています。転職する場合は、この「指定書」に書かれた会社名を変更する必要がありますが、これには「在留許可の変更申請」と同じ手続きが必要です。

変更申請には、特定技能外国人の「経歴書」「源泉徴収票」など、離職する会社に用意してもらう書類が多くあります。少なくとも「会社に黙って転職手続きをすすめ、いきなり退職届を出す」といったことは、まず無理です。

技能実習の「違法な失踪」と、特定技能の「合法な転職」を混同しないように注意が必要です

特定技能については制度がスタートしたばかりです。登録支援機関も「新規」の雇用を企業に働きかけるので精一杯という状況でないでしょうか。特定技能外国人を対象とした本格的な転職サービスが立ち上がるには、まだまだ時間がかかると考えられます。

さきほども述べましたが、技能実習の「違法な失踪」と、特定技能の「合法な転職」を混同しないように注意が必要です。